ズームタイプを理解してカメラを選択!
かつては設置から運用まで多くの手間とコストがかかり、導入ハードルが高かった防犯・監視カメラシステムですが、近年は高い注目を集める利便性の高いクラウドカメラサービスの普及も相まって、公共施設や商業施設、ビル・マンションなどはもちろん、街中でもさまざまな場所でカメラを目にする機会が増えています。犯罪や災害発生時に早期の解決・復旧や被害の最小化に寄与するほか、設置を意識させることで不正行為を未然に防いだり、作業現場での保守安全、作業最適化を図ったりすることが可能になるほか、見守り機能や映像分析によるマーケティングへの活用など、カメラがとらえる映像データのもたらす価値は大きく広がり、また多岐にわたるものとなっています。
手軽に導入できるクラウドカメラのサービスも、さまざまな事業者から提供され、設置するカメラの対応機種も実に幅広いものとなってきていますから、より設置目的や設置場所に合ったものを細かく選定、組み合わせによるシステム構築を行えば、低コストで安定性と効果の非常に高い仕組みをスムーズに整備できるでしょう。
しかし“選択する”ためには、それなりの知識が必要です。タイプによってどんな違いがあるのか、特徴とそれに伴うメリット・デメリットを理解してこそ、賢い選択・判断が可能となります。多種多様で価格もピンキリなカメラは、映像データの質にも直結しますから、とくに最適なものを選びたいですね。そこで今回は、カメラのズームタイプにフォーカスし、特徴などを解説していきます。
そもそもズームとは?基本から違いを理解
クラウドカメラシステムで用いる、無線LANなどによる接続でオンライン上のサーバーへ映像データを送信するカメラも、一般的なカメラも、その多くに「ズーム」という機能があります。このズームとは本来、カメラのレンズを動かして焦点距離を変化させ、被写体を拡大したり縮小したり、最適なサイズで撮影することを可能にする仕組みのことをいいます。デジタル化された近年のカメラ、ビデオカメラでは「デジタルズーム」という機能も普及し、「光学ズーム」と2つのズーム機能が広がっています。
広角から望遠まで、被写体を鮮明に、的確にとらえるため、欠かせないズーム機能ですが、この光学ズームとデジタルズームでは、どのような違いがあるのでしょうか。
まず「光学ズーム」ですが、こちらは通常の銀塩カメラや望遠鏡においても用いられていた、本来の意味の“ズーム”と同様、レンズを動かして焦点距離を変化させ、光学的に拡大することで遠くの小さな被写体も大きく映し出せるようにするものとなります。焦点距離を長くすることで被写体が大きくなり、短くすると被写体は小さく、より広い範囲をとらえることができます。
ちょうど虫眼鏡を近づけたり遠ざけたりするのと同じで、レンズによりズームアップ、実際に光学的な拡大がなされることとなるため、望遠・拡大時も映像の画質が劣化することはありません。拡大前と同じ鮮明さで、小さな文字や人物の顔をしっかり判別することができます。
光学ズーム30倍といったカメラならば、200メートル先の対象物を撮影することも可能です。ズーム率の高いもの、高機能なものを求めると、カメラ、レンズとも大型化し、価格も高価になってくるというデメリットはありますが、屋外の広範なエリア監視や、工場内での生産ライン稼働状況をチェックするカメラなどに用いると、全体を見回したり、必要時にズームアップして細部を確認したりすることが自在に行えるようになるため、理想的と考えられます。
ただし一箇所に高い率でズームアップすると、それ以外のエリアは撮影されない死角になるため、連続・固定的に全体を撮影し監視したい場合は、あまり意味をなさず、利用が向かない機能になる可能性があります。
デジタルズームは光学とどう違う?
こうした光学ズームに対し、「デジタルズーム」は全く仕組みから異なるものです。デジタルズームの場合、レンズ自体はそのままで動かすことがありません。よって実際にとらえている画像のサイズは変わらず、撮影した映像データの一部を切り取って、コンピュータ処理を施すことにより、被写体部分など任意の箇所を補完拡大、大きく見せるという仕組みになっています。トリミングと拡大の編集処理をカメラ内部で実行し、まるで望遠撮影したような結果を得ていると考えればよいでしょう。あくまで広角撮影時の焦点距離のままが保たれていますから、このズーム機能を用いると、対象部分が引き伸ばされて画素数が減少、大きくなりますが画質は劣化します。
昨今のカメラ端末では、そもそものスペックが向上し、多くが高解像度となっているほか、粗くなった対象の輪郭を整える補完技術も進化したものが搭載されるようになったため、デジタルズームでもさほど劣化しないズーム映像を得られるケースも増えてきていますが、やはり光学ズームに比べると遠方の被写体撮影には向かず、細部が不鮮明になるといったデメリットがあります。
一方、レンズを動かさないという特徴から、デジタルズームは故障が少ないというメリットがあります。ある程度高倍率の機能を搭載しても、カメラやレンズのサイズはコンパクトなままにすることもでき、設置場所やニーズによっては、デジタルズームの方が適している場合もあるでしょう。
また、デジタルズームと光学ズームを組み合わせ、光学ズームの補完としてデジタルズームを用いると、リーズナブルかつさらに高い倍率での鮮明な映像取得が実現されやすくなります。通常モードでは光学ズームを使い、どうしてもより拡大された映像でチェックしたい、特定部分をもっと大きくしたいというときにデジタルズームを使う、と決めておくのもよいですね。
いかがでしたか。ズームひとつをとっても、設置場所や利用目的によって使い方や最適なカメラの選択が異なってくることが理解されたかと思います。ぜひこれを参考に、よりよい防犯・監視カメラシステムの構築を目指してみてください。
(画像は写真素材 足成より)