低コストで安定運用可能なクラウドカメラに死角はないのか?
昨今、不正行為や犯罪行為の発生を未然に防止することや、異常発生時の初期対応を迅速に行い、事件の早期解決を図れるようにすることを目的とした防犯・監視カメラとしての活用はもちろん、店舗店頭や作業現場へのオペレーション改善、人間が継続的にチェックすることが難しい危険な現場の管理、マーケティング分野でのデータ活用など、幅広いシーンでカメラニーズが高まっています。そうした中かつての監視カメラなどに比べ、設置工事やシステム構築にかかる手間とコストを大幅に削減することができ、カメラ本体の設置とごく簡単な設定だけで、導入・運用が可能となるクラウドカメラが登場、利便性の高いソリューションとして活用が広がってきました。
専用録画機器などが不要で、データの保存・管理がクラウド上で行われるものとなることから、導入後の保守・メンテナンスも手間がかからず、容量を気にせず使い続けられるメリットや、機器故障や故意の破壊、災害などでのデータ逸失リスクを最小限にできるメリットなど、運用における安定性もより高く評価されるクラウドカメラですが、何事にもメリット・デメリットはつきもの、クラウドカメラゆえのマイナス点はないのでしょうか。
例えば、クラウド上のサーバーへと捉えた映像データをインターネット経由で送信しますから、そのセキュリティやネットワークにリスクがある可能性があります。通信がハッキングされたら?サーバーが攻撃を受けたら?といった不安から、導入に慎重となっている方もあるでしょう。
そこで今回はクラウドカメラのセキュリティ面にスポットを当て、考えられる危険や現在の対応状況などを解説していきます。
画像が“だだ漏れ”で明らかとなったカメラのリスク
クラウドカメラサービスにおける事例ではありませんが、ごく最近、同様に手軽な導入が可能で、インターネットを通じた遠隔地からの監視を可能とするネットワークカメラ製品において、映り込んだ個人も特定できるような映像データが、ネット上にだだ漏れしていた、事実上誰もがアクセス可能でハッカーや第三者から丸見えの状態にあったという報道が注目を集めました。この問題の原因はカメラの設定にあり、ユーザーが行うべきパスワードの変更などセキュリティ設定を行わず、映像データが公開でやりとりされる初期出荷状態のまま用いられていたことが主因でしたが、ユーザーにある程度の知識がないと安全なカメラ運用が難しいこと、手軽に購入・設置・導入が可能となった一方で、深刻な社会的セキュリティリスクが生じていることが浮き彫りになった象徴的事例だったといえるでしょう。
クラウドカメラの場合においても、カメラからデータをクラウド上のサーバーへ送信し、映像を視聴・管理するには、PCやモバイル端末など任意のデバイスからアクセスするという仕組みである以上、何らかの方法でデータのやりとりを行う必要があり、そのネットワークセキュリティには十分注意して運用していかなければなりません。
万が一、そのやりとりを行う通信経路やサーバーが悪意ある攻撃を受け、乗っ取りや盗み見の被害に遭うと、機密性・プライバシー性の高い大切なデータが漏洩したり、破壊されたりする可能性があるほか、場合によっては各カメラが攻撃者によって遠隔操作されコントロール不能になる、覗き見に悪用されることもあります。
安全に運用するには?
では、こうした深刻な事態を避けるにはどうすればよいのでしょうか。現在、クラウドカメラの主要な提供事業者によるサービスでは、全データを専用のプラットフォームシステムによって暗号化し、そのままでは解読できない状態でやりとりする仕組みがとられています。SSLや証明書、AES暗号方式の採用など、最新の技術を用いた暗号化通信をそれぞれに導入しているため、一定以上の安全性は確保されているといえるでしょう。データの転送・復元にかかる鍵交換においても、認証処理とは別の独立したアルゴリズムを用いるなど、オンラインバンキング並みの高いセキュリティ技術、世界最高水準の対策がとられているサービスなどもありますから、選定時に対応は十分か、チェックすることを忘れなければ、リスクを最小限にすることは十分に可能です。
データセンター関連事業の実績を活かし、ビジネス利用に耐えうる強固なセキュリティ対策を実装させている大手や、そもそもオープンな環境にあるインターネット網ではなく、専用のアクセスラインを設けて伝送する仕組みを構築した事業者もあり、それぞれ高水準な工夫が施されているため、現状のシステムとの親和性やニーズによって最適なものを選択すれば、クラウドの不安も払拭されるでしょう。
より対策を徹底するなら、幅広いカメラに対応するサービスであっても、構成するカメラの安全性にも気を配り、たとえ安価でも素性の不明な部分があるメーカーのカメラは導入しないようにすること、できるだけ信頼性の高い企業による自社開発カメラを採用するようにすると安心です。
もちろん、データへのアクセス時におけるID・パスワードの管理、企業内でのアクセス権限管理を徹底することも、ユーザー側における基本対策として重要であることはいうまでもありません。
いかがでしたか。このようにクラウドゆえのリスクはゼロではありませんが、サーバーの堅牢性とセキュリティ、通信経路の安全性をきちんと確認することによって、安全な運用が可能になります。提供元の技術力は十分か、信頼できる対策がとられているか、精査するよう留意しましょう。
こうした基礎的な対応をとりさえすれば、むしろ、ユーザーが一から安全なネットワークの構築・設定を行わなければならない一般的なネットワークカメラやアナログの従来型監視カメラなどのシステムに比べ、クラウドカメラの方がより高度なセキュリティ環境のもと、安心して利活用していくことがしやすい仕組みになっています。
セキュリティに関し、なお不安や不明点があれば、提供事業者に問い合わせるなどして積極的に解決を図り、ぜひ利便性の高いクラウドカメラのメリットを大いに享受してください。
(画像は写真素材 足成より)
AIカメラ総研 https://aicamera-soken.com/