ビジネスとクラウド
つい数年前まではICT業界のバズワードに過ぎなかった「クラウド」という言葉も今ではごく普通に用いられるようになりました。クラウドの概念や技術はコンピュータの黎明期からあるものの、近年のコンピュータ処理能力の向上と、通信・ネットワーク技術の発達によって、ありとあらゆるコンピューティングを根底から変えてしまいそうな勢いです。
防犯、防災や監視に用いられるカメラも例外ではありません。クラウドの技術を用いたカメラが、企業にどのように利用されているかを見てみましょう。
監視用カメラ
防犯、防災などの目的で利用されるのがいわゆる監視カメラです。かつては、ビデオカメラとビデオレコーダーの組み合わせが基本だったため、録画時間が不十分という問題、カメラ台数が増えた場合の管理の問題、そして故障対応など、様々な問題がありました。カメラがデジタル化されてハードディスクや半導体メモリに録画できるようになっても、多数のカメラに録画された映像を回収するだけでも大変な労力でした。
こうした問題を一挙に解決したのがクラウドカメラです。カメラはインターネットに接続され、カメラが捉えた映像が録画されるのはクラウドにある録画機器です。
こうした変化は、監視用カメラがそれまで抱えていた問題を解決しただけでなく、利用するシーンを大きく広げたといえるでしょう。
クラウドカメラの様々なメリット
クラウドカメラの特長は、録画機器がカメラと分離されてクラウドという利用者から離れた場所にあるということです。このことが利用者にどのような恩恵をもたらすでしょうか。まず、カメラと録画機器をつないでいるのはインターネットなので、インターネットにアクセスできる環境があれば、どこにいても録画機器にアクセスできるということです。つまりどこからでも映像(ライブ映像、録画映像両方)を見ることができるのです。
もうひとつは、録画機器はクラウドカメラ事業者が運用・管理しているので、利用者は録画機器の買い替えや修理などの費用を心配する必要がないということです。
こうした利便性や信頼性の向上、そして大幅な経費削減という効果は、多数のカメラを運用する必要がある企業にとっては大きなメリットになったことでしょう。
新たな使いみち
カメラが捉えた映像はクラウドに蓄積されていきます。そのデータ量は膨大で、いわゆるビッグデータのひとつです。そして、蓄えられた膨大なデータをビジネスに活かすことを可能にしているのもクラウドです。クラウドの世界は、データを蓄積するだけでなく、コンピューティングパワーやデータ解析のための様々なサービスも提供します。その最先端として注目を集めているのがAI(人工知能)です。
監視用のカメラがクラウドカメラになって、ビジネスシーンにおいてどのように使われるようになっているか、いくつか事例を拾ってみましょう。
クラウドカメラのビジネス活用事例
自立式カメラクラウドカメラは太陽光発電装置と携帯電話回線があれば電源が引けないところでも単独でカメラとして機能させることができます。これまで監視カメラの設置が困難だった場所にも設置できるので、自然との関わりが深い企業など、様々な場面で導入が進んでいます。
画像分析との組み合わせ
クラウドカメラが捉えた映像を、通常の(正常な)映像と比較するという画像分析によって、異常を検知し、事故やトラブルの防止に役立てることが可能です。物流業、倉庫、駐車場、製造業など様々な企業で利用されています。
飲食店、小売店などの接客業では、カメラが捉えた店舗の混雑状況、顧客の動線、さらには売れ筋商品を分析して、従業員のシフト管理やメニュー・商品の構成などに活かしている企業も増えています。
AIの応用
カメラとAIの組み合わせで最も知られているのは顔認証でしょうか。ある大手の銀行では、顔認証とAIを用い、レジを用いずにデジタル通貨で自動支払いをするというお店の実証実験を始めようとしています。
まとめ
クラウドによって大化けしたといえる監視用カメラ。単なる「見張り」からビジネスを大きく変えるツールとして、その可能性は大きく広がっています。今までは、不審者の見張りなど、企業の損失を防止するという、いわば守りのツールとしての役割が主でした。
しかし、監視カメラがクラウドと融合したことにより、新たな価値を生み出すためという攻めのツールとしての役割を果たすようになってきました。
今後もクラウドカメラがどのようなビジネスシーンで活用されるか、目が離せません。
AIカメラ総研 https://aicamera-soken.com/
(画像は写真ACより)