クラウドと自治体
企業の競争においては、最新テクノロジー活用の成否が死活に関わることも少なくありません。それに対して自治体では、最新テクノロジーの導入そのものが最先端企業と比べるとのんびりしているというのが実情ではないでしょうか。とはいえ、行政の現場においてもICTの活用は不可欠です。特に、大規模災害でサーバーが使えなくなったなどという経験をした自治体は、同じ被害を繰り返さないようにするためにクラウドにも目を向け始めています。
自治体で広く活用されている防災・防犯カメラもクラウド対応のものに置き換わりつつあります。クラウドカメラが実際にどのように自治体で活用されているか、調べてみました。
東日本大震災の教訓
戦後の自然災害としては最大規模となった東日本大震災。2万人近い死者・行方不明者を出した未曾有の災害は、町をまるごと流し去り、ライフラインはもとより、自治体が管理するサーバー群などにも壊滅的な被害をもたらしました。この災害を契機に、被害を受けた自治体(もちろん企業も)では、災害で被害にあってもコンピューターシステムやデータが保全される「クラウド」の価値を再認識することになったのです。
防災への活用
東日本大震災でカメラ録画システム全てを消失したある自治体では、監視システムをクラウドへ移行。太陽光発電による給電と無線によるインターネット接続で、自立式の監視カメラとしたのです。今までの防災カメラシステムは、監視を必要とする場所それぞれに設置されているのが普通でした。これでは、災害発生時に別々の場所で録画された映像を集めて見るだけでも大変です。
各カメラの映像がクラウドで一括管理されていれば、全ての場所の映像をどこにいても確認することが可能になります。この自治台では、河川、橋、漁港などに設置されたカメラの映像は、職員が監視すると共に、自治体のホームページでライブ画像を提供することが可能となったのです。
さらには、ライブ映像をYouTubeで配信することや、AIを活用して、ライブ映像と通常の映像との違い、つまり異常を検知して迅速に避難や通行止めなどの情報を出すなどといった取り組みもなされているのです。
防犯への活用
人は見られているという状況のもとでは犯罪行為の実行をためらうものです。これがいわゆる抑止効果。防犯カメラの効果はまさにここにあります。不幸にして犯罪が発生しても、近くに設置されている複数台のカメラが犯行前後の映像を捉えていて、犯人検挙に多大な効果を上げています。こうした重要な情報も、防犯カメラが録画機器に接続される従来タイプのものだと、録画機器の故障などによって十分な効果を発揮できないことがあります。
クラウドカメラなら、録画機器は集中管理されたクラウドの中。重要な映像の録画モレが起こる確率はグンと減らすことができるのです。
夜道、公園などで犯罪の発生を未然に防ぐ手段として、クラウドカメラは全国各地地の自治体で活用が広まっています。
見守りへの活用
少子高齢化が世界最速といわれるペースで進む我が国では、老人だけの世帯が急速に増加しています。見守りのためとはいえ、居宅内にカメラを設置することはプライバシー上、なかなか受け入れてもらえないのが実情です。しかし、クラウドに接続されたコミュニケーションロボットを高齢者の見守りに応用する自治体が出てきています。ロボットの目はすなわちカメラ。これもクラウドカメラの応用事例といえるでしょう。
まとめ
クラウドカメラの最大の特長は、録画機器をカメラの近くに設置しないですむということ。電源さえあれば(電源がなければ太陽光発電装置と組み合わせて)どこにでも設置できるのです。このことは、自治体が提供する行政サービスにおいて大きなメリットとなることでしょう。(画像は写真ACより)